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本文: 外国知的財産制度に関する調査研究報告 | 経済産業省 特許庁

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(1)

特許庁委託

平成

18

年度産業財産権制度各国比較調査研究等事業

WTO

公衆衛生に関する

2003

年合意を

踏まえた各国の国内制度整備状況

調査研究報告書

平成19年3月

社団法人

日本国際知的財産保護協会

(2)

はじめに

本調査研究は特許庁委託の平成

18

年度産業財産権制度各国比較調査研究等事業の一環

として実施した

WTO

公衆衛生に関する

2003

年合意を踏まえた各国の国内制度整備状況

調査研究」の報告書である。

主に開発途上国および後発開発途上国(

LDC

)には

HIV/AIDS

等に対応する医薬品の

製造能力が無い、又は不足している国が多く、これらの医薬品を安価に入手すべき手段を

講ずるべきだとの意見が多数出されていた。

2001

11

14

日の

WTO

−ドーハ閣僚宣言

では、世界の保健衛生問題(

HIV/AIDS

、結核、マラリアなどの伝染病が開発途上国を脅

かす現状を無視し得ないこと)を取り上げ、既存の医薬品へのアクセスと新薬の開発の両

方から、

TRIPS

協定が公衆衛生に貢献するべく実施され、

またそのように解釈することが

宣言された。

しかしながら、

TRIPS

協定

31

条では、

「国家緊急事態その他の極度の緊急事態の場合」

など一定の場合に強制実施権の設定を認めており、

HIV/AIDS

等もこれに相当すると考え

られたが、同時に

TRIPS

協定

31

(f)

の規定によって、この強制実施権に基づく特許発明

の使用を「主として… 国内市場への供給のため」と限定されているため、医薬品の製造能

力が無い、又は不足している開発途上国にとっては、この制度を活用することができない

という問題があった。

これに対し

WTO

一般理事会では、

2003

8

30

日、これらの国に対して他社の特許

が存在する医薬品を製造・輸出しようとする場合に、一定の条件のもとで

TRIPS

協定上

の義務を免除する旨の決定に合意し、さらに当該合意を恒常的なものとするために、

2005

12

月には

TRIPS

協定の改正がおこなわれた。現在、そのための議定書が

2007

12

1

日(又は閣僚会議により決定される同日よりも遅い日)を期限に、加盟国による受諾

のために開放されている(加盟国の

3

分の

2

以上の受諾により発効する)

本調査研究は、各国の特許制度等の整備状況を調査し、今後の医薬品アクセスをめぐる

国際問題の対応の際の基礎資料を作成することを目的としている。

本調査研究を進めるにあたってご協力を頂いた、企業、団体、法律事務所の方々に、こ

の場を借りて御礼を申し上げる。なお、本報告書は当協会の責任において作成されたもの

であり、日本政府、経済産業省あるいは特許庁の見解と立場を直接に反映するものではな

いことを付記する。

平成19年3月

社団法人

日本国際知的財産保護協会

国際法制研究室

主任研究員

高塩

仁愛

太尾田直美

(3)

「開発途上国に

AIDS

等の薬品の輸出を行う際の

問題検討委員会」名簿

(五十音順)

秋元

武田薬品工業株式会社

常務取締役

内山

エーザイ株式会社

知的財産部長

佐藤

一雄

三共株式会社

知的財産部長

佐藤

有三

医薬品工業協議会

知的財産研究委員会委員長

(東和薬品株式会社

管理本部次長)

春名

雅夫

中外製薬株式会社

知的財産部長

渡辺

明治製菓株式会社

F&H

知財センター

課長

渡辺

裕司

アステラス製薬株式会社経営管理本部

知的財産部長

オブザーバー

相馬

弘尚

外務省経済局国際貿易課

知的財産権侵害対策室長

福田

外務省経済局国際貿易課知的財産権侵害対策室

課長補佐

伏見

邦彦

経済産業省通商政策局通商機構部

参事官補佐

塩見

篤史

特許庁総務部国際課

課長補佐

(4)

はじめに

WTO

公衆衛生に関する

2003

年合意を踏まえた各国の国内制度整備状況調査研究委員会

名簿

Ⅰ.

WTO

における

2003

年の合意に至る経過

Ⅱ.諸外国における

TRIPS

協定改正への対応状況

1

総論

2

各国の新規立法、特許法改正の状況

新しく特別法を制定した国(地域)

特許法の改正及び特許規則の改正を実施した国

特許法のみ改正を行った国

法改正を行っていない国

3

各国法の特徴

管轄当局

申請人に関する規定

特許権の対価

輸入国と輸出国の規定

4

代表的な国の法改正の概要

4-1

カナダ

4-2

EU

4-3

ノルウェー

4-4

韓国

4-5

中国

4-6

インド

Ⅲ.強制実施権発動の手続き

1.

輸入国の資格を得る

2.

製薬企業との交渉

3.

医薬品の登録

4.

特許権者との交渉、事前協議、

5.

申請・認可

6.

WEBSITE

での情報開示

7.

補償金の支払い

8.

強制実施権の運用と終了

Ⅳ.法改正の政治的背景

1.

カナダ

2.

ノルウェー

(5)

Ⅰ.

WTO

における

2003

年の合意に至る経過

(1)

4

WTO

閣僚会議

2001

11

9

14

日にカタール国ドーハで開催された第

4

WTO

閣僚会議において、

幅広い内容を含む

WTO

新ラウンドの開始を決定する閣僚宣言

1

(ドーハ開発アジェンダ)

が採択された。

この新ラウンドは

GATT

の時代から数えると通算

9

回目のラウンドである

が、開発途上国に対する配慮からこれまでのラウンドという呼称ではなく、開発アジェン

ダと呼ばれることとなった。

同宣言の中で、

TRIPS

協定に言及した条項はパラグラフ

17

19

であるが、これらの中

で第一番目に公衆衛生の問題が採りあげられている。

Trade-related aspects of intellectual property rights

2

17.

既存の医薬品へのアクセス及び新薬の研究

開発の両方を促進することにより、

TRIPS

協定が公衆衛生を支持するような形で実施・解釈されることの重要性を強調。

18.

地理的表示のワイン及びスピリッツに関する通報登録制度の設立について交渉に合

意。地理的表示の追加的保護の対象産品拡大について

TRIPS

理事会で検討し、

2002

年末までに取るべき適切な措置について貿易交渉委員会(

TNC

)に報告を行う。

19.

TRIPS

理事会において、

生物多様性条約との関係、

伝統的知識・フォークロアの保護、

新技術等について検討

また上記閣僚宣言と同時に出された「

TRIPS

協定と公衆衛生に関する閣僚宣言

3

」は知

的財産権制度が

HIV/AIDS

等の感染症等に対する医薬品へのアクセスに影響を与えてい

るとの開発途上国の懸念を踏まえ、

各国の公衆衛生施策実施に当たって、

TRIPS

協定の解

釈の柔軟性を明確にしたものであり、具体的には、

HIV/AIDS

等による公衆衛生の危機

的な状況が国家緊急事態に相当するものとして、特許権者と事前の協議が無くても、強制

実施権を発動できることとした

4

TRIPS

協定と公衆衛生に関する宣言

(

骨子

)

5

1.

HIV/AIDS

結核、

マラリアや他の感染症といった途上国等を苦しめている公衆衛生

の問題の重大さを認識。

2.

TRIPS

協定がこれらの問題への対応の一部である必要性を強調。

3.

知的所有権の保護の、

新薬開発のための重要性を認識。

医薬品価格への影響について

の懸念も認識。

4.

TRIPS

協定は、加盟国が公衆衛生を保護するための措置をとることを妨げないし、

妨げるべきではないことに合意。

公衆衛生の保護、

特に医薬品へのアクセスを促進す

るという加盟国の権利を支持するような方法で、

協定が解釈され実施され得るし、

れるべきであることを確認。

5.

TRIPS

協定におけるコミットメントを維持しつつ、

TRIPS

協定の柔軟性に以下が含

1 http://www.wto.org/english/thewto_e/minist_e/min01_e/mindecl_e.htm 2 http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/wto/wto_4/koshi.html

3 http://www.wto.org/english/thewto_e/minist_e/min01_e/mindecl_trips_e.htm 4 http://www.meti.go.jp/discussion/topic_2002_2/kikou_03.htm

(6)

まれることを認識。

(a)

TRIPS

協定の解釈には国際法上の慣習的規則、

TRIPS

協定の目的を参照。

(b)

各加盟国は、

強制実施権を許諾する権利及び当該強制実施権が許諾される理由を決

定する自由を有している。

(c)

何が国家的緊急事態かは各国が決定可能、

HIV/AIDS

、結核、マラリアや他の感染

症は国家的緊急事態と見做すことがあり得る。

(d)

知的所有権の消尽に関して、

提訴されることなく、

各国が制度を作ることができる。

6.

生産能力の不十分または無い国に対する強制実施権の問題は

TRIPS

理事会で検討

し、

2002

年末までに一般理事会に報告。

7.

LDC

に対する技術移転促進を再確認。

LDC

は、

2016

年1月まで医薬品に関しては

TRIPS

協定第5節(特許)及び第7節(開示されていない情報の保護)について義

務を負わない。第

66

1

項の経過期間の延長を求める権利を妨げない。

ここで、特に

6.

の項が設けられたのは特許権者の許諾を得ていない他の使用に関する

TRIPS

協定第

31

(f)

の文言に対する措置である。また、

7.

の項を受けて、

TRIPS

理事会

は、

2002

6

27

日、

TRIPS

協定第

66

1

項に基づき、

LDC

の医薬品に関する経過

期間の延長を決定

6

TRIPS

協定第

31

(f)

7

:他の使用は、

主として当該他の使用を許諾する加盟国の国内市

場への供給のために許諾される。

つまり、

TRIPS

協定と公衆衛生に関する宣言によって、

加盟国に、自国の緊急事態に対

して、

強制実施権を発動して特許対象の薬品を製造・頒布する政策決定の自由を保障すると

いう内容であるが、

TRIPS

協定第

31

(f)

の規定がもっぱら強制実施権を発動した国の国

内市場への供給のために限定されるため、自国内に当該薬品の生産能力を持たない、又は

十分でない国々にとっては、上記の宣言では必要な薬品の供給が保障されていないことに

なるからである。

同宣言では、

この問題に対する対応策を

2002

年末までに

TRIPS

理事会

で検討することが義務付けられた。

(2) 2003

8

30

日の一般理事会決定

8

自国内に当該薬品の生産能力を持たない、又は十分でない国々に対する薬品を供給する

ことを保障するための交渉に付いては、対象とする疾病の範囲をどのようにするか、一旦

開発途上国に輸出した医薬品が還流したり、他の国に流出したりすることをどのようにし

て防止しようかということ等について、なかなか意見の一致を見ることが出来ず、交渉期

限である

2002

年末までに終結させることは出来なかったが、

2003

8

30

日に至って

ようやく交渉を終結させることが出来た。

この決定では、

公衆衛生の問題に対応するため、

強制実施権に基づき製造された医薬品を他国へ輸出することに関して

TRIPS

協定の改訂

が行われるまで、一定の条件のもとで第

31

(f)

に基づく義務を免除することが決められ

6 http://www.wto.org/english/tratop_e/trips_e/art66_1_e.htm

(7)

ている。

ここで一定の条件とは理事会決定のパラグラフ

2

(a)

(c)

が相当する。

(a)

輸入国が

(i)

(iii)

TRIPS

理事会に通報すること。

(i)

必要とする医薬品の名前と必要量を特定する

(ii)

輸入国が医薬品の生産能力が不十分である又は無い事を確認する

(iii)

輸出国において

TRIPS

協定第

31

条に従った強制実施が認められること

(b)

輸出国の強制実施には

(i)

(iii)

の条件を含むこと。

(i)

輸入国が必要とする量のみを生産しても良いが、生産量の全てが医薬品を必要と

する当該輸入国に輸出されること。

(ii)

この制度の下で生産されたことが製品のラベルやマークによって示されること。

パッケージや薬の色や形を変えて区別すること。

(iii)

強制実施の許諾を受けた者は以下の情報を

WEBSITE

に掲載すること。

-

輸出される量

-

医薬品を区別するパッケージ、色、形などの特徴といった情報

(c)

TRIPS

理事会にその条件を含めて強制実施を通報。

また、

同時に関係国間の信頼を構築するため議長声明

9

が出された。

議長声明の要旨は以

下の通りである。

1.

加盟国は決定により設けられる制度が公衆衛生を保護するために善意で使用し、工業

上又は商業上の政策目標を達成するための手段として使用してはならない。

2.

加盟国は決定に基づいて供給される製品が意図される市場を迂回することを防止す

るための合理的な措置を講じなければならない。参考までに、企業の経験に基づいた

「ベストプラクティス」をこの声明に添付した。

3.

加盟国は実施から生じる問題を速やかに且つ有効的に解決するよう努める。

-

透明性を高め論争を避けるため、加盟国が医薬品分野における生産能力が不十分であ

る、又は無いことを立証した情報を含める。

-

本制度に基づいて行われる通報はその次の会合で取り上げられる。

-

いずれの加盟国も決定の解釈又は実施に関するどのような問題も

TRIPS

理事会に付

託することができる。

-

いずれの加盟国も、決定の条件が十分遵守されていないという懸念を有する場合、事

務局長又は

TRIPS

理事会議長の斡旋を利用することができる。

4.

本決定の実施についての情報は

TRIPS

理事会の年次審査で取り上げられる。

加えて、

オーストラリア、オーストリア、ベルギー、カナダ、デンマーク、フィンランド、フ

ランス、ドイツ、ギリシア、アイスランド、アイルランド、イタリア、日本、ルクセ

ンブルク、オランダ、ニュージーランド、ノルウェー、ポルトガル、スペイン、スウ

ェーデン、スイス、イギリスおよび米国は輸入国として制度を利用しない。チェコ共

和国、キプロス、エストニア、ハンガリー、ラトビア、リトアニア、マルタ、ポーラ

ンド、スロバキア共和国、スロベニアは、欧州連合に加盟するまでは、国家緊急事態

(8)

等の場合にのみ輸入国として制度を利用するが欧州連合に加盟した後は制度を利用

しない。香港、イスラエル、韓国、クウェート、マカオ、メキシコ、カタール、シン

ガポール、台湾、トルコ、アラブ首長国連邦は、国家緊急事態等にのみ輸入国として

制度を使用するとしている。

添付書類「ベストプラクティス」

当該製品を他の市場に供給される製品から区別するために企業が実施した事例。

-

ブリストル・マイヤーズ・スクイブ社は、サブサハラアフリカに供給したカプセル剤

に異なるマーク/印を使用。

-

ノバルティス社は先進国向けに抗マラリア剤には

Riamet®

を、

開発途上国向けの同製

品には

Coartem®

という異なる商標を使用し、特徴あるパッケージにより製品を区別

した。

-

グラクソ・スミスクライン社は、

開発途上国に提供される

HIV/AIDS

薬に異なる包装

および異なる数値の刻印を付すことによって製品を区別した。

-

メルク社は、

HIV/AIDS

抗レトロウイルス薬に特別の包装とラベルを使用した。

-

ファイザー社は南アフリカに提供した薬品に異なる色と形を用いた。

(3) 2005

12

6

日一般理事会決定

2003

8

30

日の一般理事会決定が出された後、協定第

31

(f)

の履行義務免除を恒

久的にするための改定案についての交渉が行われ、

2005

12

6

日一般理事会において

合意に至った。この

TRIPS

協定を改正する議定書は現在、加盟国の受諾のため、

2007

12

1

(又は閣僚会議により決定される同日よりも遅い日)

まで開放されている。

この

議定書が発効するためには、

加盟国

(現在

150

カ国)

3

分の

2

が受諾する必要があるが、

平成

19

2

月末日現在で受諾を済ませた国は、

米国

2005

12

17

日)

スイス

(2006

9

)

、エルサルバドル(

2006

9

19

日)

、韓国(

2007

1

24

日)およびノルウ

ェー(

2007

2

5

日)の

5

カ国のみである。

この決定は、

TRIPS

協定第

31

条の次に第

31

条の

2

を挿入すること、

及び第

73

条の次

に協定の附属書を挿入することの二点からなっている。

挿入される

TRIPS

協定第

31

条の

2

(仮訳

10

)を以下に示した。

1.

31

(f)

における輸出国の義務は、この協定の附属書の第

2

パラグラフに規定され

た条件に従い、

医薬品を製造する目的のため及び資格のある輸入国へ輸出する目的の

ため必要な限りにおいて、強制実施権の許諾に関して適用しない。

2.

この条及びこの協定の附属書に規定される制度において、

輸出国により強制実施権が

許諾される場合、輸出国において許可された使用の輸入国での経済的価値を考慮し、

31

(h)

に従い適当な報酬が輸出国において支払われる。

資格のある輸入国におい

て、

同一の生産物に強制実施権が許諾される場合、

31

(h)

における加盟国の義務

は、

このパラグラフの第一文に従い輸出国において報酬が支払われた生産物には適用

(9)

しない。

3.

医薬品の購買力を強化するために経済規模を拡大し、

及び医薬品の地域における製造

を促進させることを目的として、

1994

年の

GATT

の第

24

条及び

1979

11

28

日の異なるかつ一層有利な待遇並びに相互主義及び開発途上国のより十分な参加に

関する締約国団の決定(

L/4903

)の意味する範囲内で、

WTO

加盟国である開発途上

国又は

LDC

が地域貿易協定の構成国となっていて、

その構成国の少なくとも半数が、

LDC

に関する国際連合の表に現在掲載されている国からなるときには、この国にお

ける強制実施権の下で製造され又は輸入された医薬品が、

対象となる衛生問題を共有

する地域貿易協定内の他の開発途上国又は

LDC

の市場へ輸出されることを可能とす

るに必要な限り、第

31

(f)

における加盟国の義務は適用されない。これは、対象と

なる特許権の属地性に影響を与えるものではないと解する。

4.

加盟国は、この条及びこの協定の附属書の規定に合致する措置については、

1994

GATT

23

1

(b)

及び

(c)

に基づく申立てを行わない。

5.

こ の 条 及 び こ の 協 定 の 附 属 書 は 、

TRIPS

協 定 と 公 衆 衛 生 に 関 す る 宣 言

WT/MIN(01)/DEC/2

)で再確認されたものを含め、第

31

(f)

及び

(h)

以外のこの

協定の条項のもとで加盟国が有する権利、

義務、

柔軟性を予断するものではなく、そ

れらの解釈を予断するものではない。同様に、現在の第

31

(f)

のもとで、強制実施

権により生産された医薬品がどの程度輸出されうるかについて予断するものではな

い。

また、第

73

条の次に挿入される付属書の仮訳

11

は以下の通りである。

1.

31

条の

2

及びこの附属書において、

(a)

「医薬品」

とは、

TRIPS

協定と公衆衛生に関する宣言

(WT/MIN(01)/DEC/2)

の第

1

パラグラフにおいて認識されている公衆衛生上の問題に対応するために必要とさ

れる、医薬品分野の特許生産物又は特許製法により製造された生産物を意味する。

製造に必要な有効成分及び使用に必要な診断道具が含まれうると解される

12

(b)

「資格のある輸入国」とは、

LDC

及びその他の加盟国であって、輸入国として第

31

条の

2

及びこの附属書に規定された制度を利用する意思を

TRIPS

理事会に通報

した国

13

を意味し、加盟国は、同制度を全部又は限定的に利用すること、例えば、

国家緊急事態の場合又はその他極度の緊急事態の場合あるいは非商業的使用の場

合のみに利用することを、

いつでも通報することができるものと解する。

当該制度

を輸入国として利用しないとする国

14

及び同制度を利用するとしても国家緊急事

態の場合又はその他の緊急事態の場合に限られると表明している国も存在するこ

とが認められる。

(c)

「輸出国」

とは、資格のある輸入国向けに医薬品の生産を行い、

資格のある輸入国

11 http://www.jpo.go.jp/torikumi/kokusai/kokusai2/pdf/wto_trips_giron/kariyaku.pdf 12 この副パラグラフは副パラグラフ1(b)の規定を侵すものではない。

13 制度を利用するにあたり、この通報はWTOの機関の承認を受ける必要はないと解釈される。

14 オーストラリア、カナダ、EU及びその加盟国、アイスランド、日本、ニュージーランド、ノルウェー、ス

(10)

にそれを輸出するために、制度を利用する加盟国を意味する。

2.

31

条の

2

1

パラグラフでいう条件は、

(a)

資格のある輸入国

15

TRIPS

理事会に対し、以下の通報をすること

(i)

必要とする生産物の名称及び期待される数量を明確

16

にするもの、

(ii)

LDC

加盟国以外で対象となる資格のある輸入国が、当該この附属書の補遺に記

載された方法のいずれかで、

当該生産物について医薬品分野の製造能力が不十分

であるかまたは製造能力がないことを、

その国として立証したことを確認するも

の、かつ

(iii)

その資格のある輸入国の領域において医薬品が特許となっている場合には、

資格

のある輸入国が第

31

条、

31

条の

2

及びこの附属書の条項に従って強制実施権を

許諾したか又は許諾する意図を有することを確認するもの

17

(b)

当該制度にもとづき輸出国により付与された強制実施権は次の条件を含まなけれ

ばならない:

(i)

その実施権の下で製造することができるのは、

資格のある輸入国の需要を満たす

のに必要な量のみであり、この生産量の全部を、その需要があることを

TRIPS

理事会に通報した資格ある輸入国に輸出しなければならない。

(ii)

実施権にもとづき生産された生産物が当該制度によって生産されたものである

ことが特殊なラベル又はマークにより明確に特定されるようにしなければなら

ない。

供給者は斯かる生産物につき、

製品自体に特殊な包装をほどこすか特殊な

色をつけるか、

もしくは特殊な形状とすることにより他の生産物と明確に識別さ

れるようにすべきである。

ただし、

このような識別化は実施可能でかつ価格に大

きな影響が出ないものとする。

(iii)

出荷が開始される前に、実施権者は

WEBSITE

18

に次の情報を載せるものとす

る。

-

上記

(i)

に記載された各国向けに供給される数量

-

上記

(ii)

に記載されたような生産物を識別するための特徴

(c)

輸出国は実施権を許諾することをその条件と併せ

TRIPS

理事会に通報する

19

もの

とする

20

。この通報には以下の情報が含まれるものとする。実施権者の氏名及び住

所;実施権許諾対象の生産物;実施許諾対象の数量;当該製品が供給される国(又

は国々)並びに実施権許諾の期間。また、この通報には上記副パラグラフ

(b)(iii)

15 31条の2の第3パラグラフにある地域機関は、当該機関に属し当該制度を利用する各資格のある輸入国

の了解を得て、これらの資格のある輸入国のために、この副パラグラフで要求されている情報を提供するた めの共同通報を出すことができる。

16 この通報は当該制度専用のWTO WEBSITE上でWTO事務局により公表される。

http://www.wto.org/english/tratop_e/trips_e/public_health_e.htm

17 この副パラグラフはこの協定第661項の規定を予断するものではない。

18 実施権者はこの目的のために自己所有のWEBSITEを利用することができ、又はWTO事務局の支援を受

けて、当該制度専用WTO WEBSITEを利用することができる。

19 この通報は、当該制度を利用するにあたりWTOの機関による承認を受ける必要はないと解釈される。 20 この通報は当該制度専用のWTO WEBSITE上でWTO事務局により公表される。

(11)

記載の

WEBSITE

のアドレスが示されていなければならない。

3.

当該制度にもとづき輸入された生産物が、

その輸入の基礎となっている公衆衛生上の

目的のために使用されることを確実ならしめるために、

資格のある輸入国は、

自国で

取り得る手段の範囲内で、

その行政能力と輸出流用のリスクにみあった、

合理的な措

置を講じ、

当該制度のもとでその自国の領域内に実際に輸入された生産物が再輸出さ

れないようにするものとする。開発途上国又は

LDC

である資格のある輸入国がこの

規定を実行するにあたり困難に遭遇する場合には、

先進国は、

要請に応じ、

かつ相互

に合意した条件により、

その実行を容易にするための技術的及び経済的な協力を行う

ものとする。

4.

加盟国は、

この協定においてすでに利用することが求められている手段を利用し、

該制度によって生産され、

及びその条項に違反して当該加盟国の市場に還流された生

産物が当該加盟国に輸入され及び販売されることを防止するための法的手段の有効

性を確実ならしめなければならない。

そのような手段がその目的に対し不十分である

ことが明らであると加盟国が考える場合には、当該加盟国の要請により

TRIPS

理事

会でこの問題を審査することができる。

5.

医薬品の購買力を強化するために経済規模を拡大し、

及び医薬品の現地における製造

を促進させることを目的として、

31

条の

2

3

パラグラフに記載された加盟国に

おいて適用される広域特許の付与を可能とする制度の開発が促進されるべきである

と認識される。このために先進国は、他の関連政府間機関と連携することも含めて、

この協定第

67

条に従い、技術協力の提供を行う。

6.

加盟国は、

医薬品分野の製造能力が不十分もしくは無い加盟国が直面している問題を

克服するためには、

医薬品分野における技術移転及び能力向上を促進することが望ま

しいと認識する。

このために、

資格のある輸入国と輸出国には、

この目的の達成が促

進されるような方法でこの制度を利用することが奨励される。

加盟国は、

この協定第

66

2

項、

TRIPS

協定と公衆衛生に関する宣言の第

7

パラグラフ、及び

TRIPS

事会における他の関連する作業を遂行する中で、

医薬品分野における技術移転と能力

向上に特に注意を払い協力を行う。

7.

TRIPS

理事会は、当該制度の効果的な運用を確実ならしめるために当該制度の機能

について毎年審査し、一般理事会にその運用状況を毎年報告しなければならない。

尚、一般理事会での決定と平行して、

TRIPS

理事会では

LDC

LDC

)に対する

TRIPS

協定履行の経過措置期間

21

を、

LDC

からの延長要請に基づいて、

2013

7

1

日まで延

長(

7

6

ヶ月の延長)することが決定されている。

21 LDCに与えられたTRIPS協定履行の経過措置期間は10年であり、当該規定によって200512月末に

(12)

Ⅱ.諸外国における

TRIPS

協定改正への対応状況

1.

総論

前述したように

2005

12

6

日一般理事会決定により提示された

TRIPS

協定第

31

(f)

の履行義務免除を恒久的するための

TRIPS

協定改定議定書

22

は加盟国の受諾のため、

2007

12

1

日(又は閣僚会議により決定される同日よりも遅い日)まで開放されてい

る。この議定書が発効するためには加盟国(現在

150

カ国)の

3

分の

2

が受諾する必要が

あるが、平成

19

2

月末日現在で受諾を済ませた国は、米国(

2005

12

17

日)

、ス

イス(

2006

9

月)

、エルサルバドル(

2006

9

19

日)

、韓国(

2007

1

24

日)

およびノルウェー(

2007

2

5

日)の

5

カ国のみである。

このうち韓国およびノルウェーでは特許法の改正が完了しており、スイスについても改

正案が連邦議会で審議中となっている。これに対していち早く受諾を済ませた米国につい

ては特許法等の改正は行われていない。

ただし、

米国においても特許法の改正の動きがあり、

2006

5

109th Congress 2nd

Session)

に特許医薬品の輸出を可能とするための法案(

S3175

)がパトリック・リーハイ

上院議員より提出された。この法案では、①米国特許法(

35USC

)の

297

条の後に

298

条(公衆衛生目的の医薬品の輸出)を追加することおよび、②米国特許法(

35USC

)の

271

条を修正して上記の目的と生産が特許権侵害にならないことを明確化することとなっ

ている。ただし、当該法案は会期中に成立せず、

2006

11

7

日に実施された中間選挙

の結果、上下両院で共和党に代わって民主党が多数派となったため、今後の動向を注視す

る必要がある。

なお、現行の米国特許法(

35USC

)では強制実施権の規定が設けられていないが、私有

財産を公共の用途に供する場合には連邦政府による強制的な実施を可能と各種の規定がも

うけられている

23

。これらの実例として

2001

10

月に米国で炭疽素菌テロ事件が起こっ

た際に、有効な医薬品(バイエル社のシプロフロキシン)を確保する手段として、上院の

シューマー議員(後発医薬品へのアクセス改善を目的とする

S817

法案(マケイン・シュ

ーマー法案)の共同提案者でもある)が、国家が公共の用に供する場合には、知的財産権

を制限して後発医薬品製造業者からコピー薬を購入することが連邦法上認められるとして、

インドやイスラエルの後発医薬品製造企業からコピー医薬品を低価格で輸入するよう保健

省に要請した(

The Public Health Emergency Medicines Act 2001

)事実は有名である。

本件に付いては結局のところ、バイエル社側が増産と価格引下げに応じる妥協案を出すに

至ったことで解決している。

一方、前記の受諾が未了の国の中でも、

2003

8

30

日の一般理事会決定に対応する

ための法改正を実施または準備中の国がある。

例えばカナダでは

2004

5

14

日に

The

Jean Chrétien Pledge to Africa Act

が立法化され、

また、

オランダの特許法の改正

2004

22 TRIPS協定第31条の次に第31条の2を挿入すること、及び第73条の次に協定の附属書を挿入すること

の二点からなっている。(詳細は第Ⅰ章参照のこと)

23 政府使用(28USC§1498、介入権(35USC§203)等。また、大気汚染防止法(42USC§7608、原子力エ

(13)

12

23

日施行

24

)、

EU

規則(

816/2006

2006

6

29

日施行)の制定なども既に

完了している(第

II

章4参照)。

このように、特別法の立法や特許法の改正などが行われている国もあるが、例えば欧州

連合加盟国では、スペインのように現行法は

EU

規則

(816/2006)

と相補的であるとして法

改正を予定していない国もある。

以下に主要国の動向を地区別に纏めた。

表.1

a

欧州諸国の対応状況

改正状況(欧州連合加盟国はEU規則(816/2006)への対応状況) 現行法輸出

規定有無

取組み 入手情報要旨

強制実施権

管轄局

ベルギー × 準備中

特許法の強制実施権に関する条項(2005年5月

13日法改正)は、国内での公衆衛生問題に関わる 規定であり、輸出を意図した法改正準備中。

経済大臣

デンマー ク

× 改正せず

特許法 第47条に重大な公益という事由が挙げら れているが、国内市場への供給目的等の限定的な 規定はない。従って、EU規則と補完的。

海事商業 裁判所

ドイツ × 準備中

施行規則草案起草中:EU規則対応に関しては、 施行規則の改正案が司法省の担当部局で起草中。

特許裁判 所

スペイン ○ 改正せず

EU規則とスペイン法No.11/1986には矛盾する ことはない。結論として法の改正は必要がない。

産業財産 登録庁

フランス

EC内には 可能△

準備中

現在国民会議から国務院に改正法案が回った(草 案は公開されていない)。EU規則に対応し多くの 改正がある模様。別に国際航空チケット寄付金連 合と国際医薬品購買機関(IDPF)の提案がある。

工業所有 権担当大 臣

イタリア × 改正せず

第72条4項(2005年年初発効)は、TRIPS協 定第31条(f)を文字通り転載したもの(WTO加盟 国の国内市場への供給の為に許諾)。

産業通商 工芸省

ハンガリ ー

× 準備中

議会に2007年2月末に提出予定。EU規則には、 国内法で規定する必要がある条項(技術規定、担 当官庁の決定、告知システム)を含むので特許法 の改正準備中。政府、国会への上程・立法化と

TRIPS協定の批准をリンクさせる所存。

裁判所

オランダ × 改正済み

特許法第57条1項の運用規定が2004年12月23 日に施行。但し、EU規則の施行に伴い、この規 則は2006年11月17日に廃止。

経済大臣

オースト リア

× 改正せず

特許法第36条に強制実施権の規定。EU規則と補 完的になり、公衆衛生に対処するべく特許医薬品 を輸出目的で製造することを妨げない規定であ る、との説明あり。

特許庁

フィンラ ンド

× 準備中

フィンランド通商産業省のニュース・リリースに よると、EU規則に対応する特許法の改正が必要 になり、改正草案の準備は2007年年頭に開始さ れる公算。

ヘルシン キ地方裁 判所

英国 × 準備中

EU規則との調和に必要な改正を検討(厚生省、 医薬品庁と合同)。小児科用医薬品の規制改正の必 要が生じた為、合わせて特許法改正を行う。法案 のConsultationは予定より先になる。

特許庁長 官

24 EU規則(816/2006)との整合性を取る必要から、当該法律が20061117日に施行の法律により廃

(14)

ノルウェ ー

× 改正終了

欧州連合非加盟国故、EU規則には拘束されない。 強制実施は主として国内市場に供給する目的とさ れていたが、特許法改正により国王が輸出を認め る条文を決定することが可能。

オスロ市 裁判所(申 請は製薬 会社に限 定)

スイス × 準備中

欧州連合非加盟国故、EU規則には拘束されない。

2006年7月5日国会TRIPS協定批准可決(2006 年7月5日)、更なる特許法修正指示。現在特許 法案のConsultation中で意見募集は2007年3月

30日が期限である。

裁判所

表.1

b

アジア・オセアニア諸国の動向

諸国の動向 今後の予定 韓国

改正特許法(20015年5月31日)でWTO合意に基づいて医薬品の輸出が出来 るようになった(第107条1項)

改正終了 特許細則(2001年7月1日施行)の第5章、特許の強制実施権は国内市場の需

要に応える為に限定されており、輸出目的の規定はない。

「特許権の強制実施権に関する弁法(国家知識産権局局長令(第31号))」、

2003年7月15日施行、強制実施権の設定、裁定、終了等の手続きを規定。 「公衆の健康問題に関わる特許実施の強制許諾に関する弁法(国家知識産権局 局令(第37号))」2006年1月1日施行。輸出入の両方向可能。

中国

知識産権局が専利法の第3次改正の意見募集(2006年8月1日)を実施。強制 実施権に関連した改正点(第49条:国務院担当主管部門が申請。公衆衛生が国 家危機を構成。強制実施権の下に製造・輸出を可能とする規定を明示。第51条: 合理的交渉期間内の許諾不首尾の証明。)

特許法改正 中

改正特許法(2004年7月1日施行)で強制実施権を明確化。

強制実施権発動例:対鳥インフルエンザ対策として台湾知的財産局は2005年

11月25日に経済部、衛生署、特許権者であるギリアド社、タミフルの製造ラ イセンスを持つロシュ社と審査会議を行い条件付きで衛生署にタミフル製造の 強制実施権を認めた。

台湾

特許法再改正:2006年4月17日公聴会(関係省庁、法律事務所、製薬工業会、 製薬研究協会)を実施。他の条文改正と合わせて上程予定(76条)。台湾製造 のタミフルを輸出可能にする。

特許法改正 中(途上国 向け輸出の 目的の規制 追加)

シンガポー ル

改正特許法(2004年7月1日施行)で他国政府との協定に基づく特許発明のシ ンガポール政府使用(TRIPS協定と公衆衛生に関するDoha宣言とシンガポー ルを調和させたもの)を規定。但し、強制実施権の規定では国内への供給目的 に限定。

特許法改正 の必要性を 研究中。

1999年特許法改正:医薬品に関する義務規定を削除(第46条:期限内に実施 していない場合、第51条:公共利益のための強制実施規定。但し、輸入や輸出 を規定していない。)

1999年、上記第51条に規定された強制実施権を発動したエイズ治療薬製造の 動き。薬価で引き下げられた結果、発動には至らず。

2002年、司法当局が、製薬会社が特許医薬品価格のコントロールや、そのアク セスを制限した場合に、HIV陽性者らがそれについて提訴する権限を有すると いう判決を出した。ブリストル・マイヤーズ・スキッブ社は、この判決をうけ て「タイの人々に特許権を捧げる」ことを決定した。

タイ

タイ国営製薬公社(GPO:Government Pharmaceutical Oragnisation)、タ イ政府製薬機構)では、2007年1月に強制実施権を発動してEffavirenzを製造 する(GPO-vir)計画を発表。

改正特許法(2001年8月1日):強制実施権は国内市場の需要を満たす目的以 外は許可されない(第79条(g))。

インドネシ ア

(15)

知的所有権法(法律第8293号、1998年1月1日施行)の第94条から98条、 第100条、及び知的所有権規則(1998年改正)の第5条から17条に、強制実 施権関連の規定。国内市場への供給が前提(規則100条4)。

フィリピン

2006年6月7日上院に特許法改正法案(Senate Bill 2263:国内での医薬品ア クセスを改善、輸出目的ではない)提出。2007年2月上院解散の見込みで、法 案は審議未了の可能性大。

インド

2005年改正特許法(2005年1月1日施行)で、医薬品・食品の物質特許を認め た(第5条削除の結果)、強制実施権は特許付与後、3年以降は誰でも強制実施 権を申請可能第84条。特許権者から許諾を得られなかった期間は6ヶ月を越え ないと明示。同時に開発途上国への輸出を可能とする第92A条を追加。

改正終了

オーストラ リア

1990年特許法(改正2006年法令第106号)。一般的な強制実施権に関する規 定で、公衆衛生に関する特許医薬品の製造や輸出に関する規定はない。

法改正の予 定なし。 特許法(2002年法律第72号)の改正の準備中。一般的な強制実施権に関する

規定で、公衆衛生に関わる特許医薬品の製造や輸出に関わる規定はない。 ニュージー

ランド 政府として公衆衛生問題への対応は計画。特許法の改正は公衆衛生関連での強 制実施権に関しては考えていないという回答。

法改正の予 定なし。

2.

各国の新規立法、特許法改正の状況

新しく特別法を制定した国(地域)

・カナダ:

2004

5

14

日に

The Jean Chrétien Pledge to Africa Act

が立法されてい

る。本法に基づく

Canada’s Access to Medicines Regime

The Jean Chrétien Pledge

to Africa Act

による施策を含むカナダの発展途上国医療支援体制の総称)

は、

2005

5

10

日に詳細な施行規則が開示されるなど具体的な手続きが策定され、また鳥インフ

ルエンザの特効薬も対象に加えるなど逐次、改正も行われている。

また、同法の制定に伴い特許法第

21

条(カナダ政府と他国政府との協定)に大幅な

条文が付加された。特徴的なことは、許可対象の医薬品、及び輸入国(国情に応じて、

3

水準に分けてある)のリストが付属していることである。続いて

2005

5

10

日に

は、

特許医薬品の製造・輸出に向けた強制実施権に関する特許規則

SOR

2005

143

も定められている。本規則により特許使用料計算法(特許法の輸入国リストが

3

水準に

分けてあるのは、特許使用料の算定を国情別に規定するからである)、申請書様式、宣

誓供述書様式、その他の詳細な事項が規定されている。関連する手続きがすべて規定さ

れていることは最大の特徴であり、これは発展途上国の危機に迅速に対処可能な実際的

な施策であるべく構築されたからである。対象となる医薬品はリスト化されているが、

これは法制化による固定化ではなく、実際、状況に即応して改正されている。カナダ法

の詳細については、本章の

4.

に詳細を示した。

・オランダ:全

7

条からなる。

Policy rules on issuing compulsory licences pursuant to

WTO Decision WT/L/540 on the implementation of paragraph 6 of the Doha

Declaration on the TRIPS Agreement and public health, under section 57, subsection

1 of the Kingdom Act on Patents of 1995

2004

12

23

日施行)

、以下、

「強制実施

権施行法」と略称。

ただし、当該強制実施権施行法は特許法の運用規則の一部として理解することも出来

る。現行のオランダ特許法(

1994

12

13

日改正、

1995

4

1

日施行、ただし,

(16)

57

条に公共の利益の為に経済大臣が強制実施権を付与する要件が規定されている。

さらに、

2003

8

30

日の一般理事会決定に対応して、特許法第

57

1

項の運用規

定が(即ち、特許医薬品を困窮国に輸出すべく製造する強制実施権の手続きや運用に関

しての規則)が、

2004

12

21

日に公布され、同年

12

23

日に施行されている。

ただし、当該改正は

EU

規則

(816/2006)

施行前であるため、

EU

規則に適合させる必

要が生じた場合には、この運用規定は改正

25

される旨が運用規則の最後に付記されてい

る。

・中国:

「特許権の強制実施権に関する弁法(国家知識産権局局長令(第

31

号)

2003

7

15

日施行、強制実施権の設定、裁定、終了等の手続きが規定されている)およ

「公衆の健康問題に関わる特許実施の強制許諾に関する弁法

(国家知識産権局局令

(第

37

号)

2006

1

1

日施行)

が制定されている。

中国法の概要に付いては、

本章の

4.

に示した。現在、改正が計画されている。

・欧州連合:欧州連合においても

2003

8

30

日の一般理事会決定に対応するため、

たに

EU

規則(

816/2006

2006

6

29

日施行

26

)が設けられた。

EU

規則の制定に

伴い、加盟の諸国は当該規則との整合性をとる為に必要な国内法の改正等の対応が要求

されている。ただし、対応が未了の場合であっても、加盟国は当該規則に拘束されると

の運用がなされている。

特許法の改正及び特許規則の改正を実施した国

・ノルウェー:

2003

12

19

日の法律

127

号によって旧特許法の修正および、新条文

の付加がなされた。改正特許法では特許法第

45

条(国際協定の取り決めに従った互恵

的な義務についての規定付加)

、第

47

条(強制実施権交付の要件として、重要な公益の

為に必要であること以外に競争を著しく制限する形で特許発明が利用されることが追

加)

、第

49

条(強制実施権は主として国内市場に供給する目的で付与されるが、国王は

これに反する規則を定めることが出来るという条文の挿入。この条文が輸出目的で特許

医薬品を製造出来るという

WTO

公衆衛生問題対応の根拠となっている)

、第

50

条(裁

判所、または競争促進局が強制実施権の主管であることなどが追記されている)

、第

50

(a)

(裁判所に加えてノルウェー競争促進局が主管する場合の要件を追加)が主な改正

点である。

加えて特許規則(

2004

6

1

日施行)にも第

107

条∼第

109

条が新設され、輸出

目的の特許医薬品の製造に関する執行体制が規定されている。ノルウェー法の概要に付

いては、本章の

4.3

に示した。

・インド:

1970

年の特許法をさらに改正するための特許(改正)法、

2005

年(

2005

年の

No. 15

2005

4

4

日公布、

1

1

日に遡及して施行)

に医薬品の製造能力を持たな

い国への輸出を目的として強制実施権を可能ととする第

92A

条が追加された。

加えて、同時に施行された改正特許規則では強制実施権およびその取消を規定する第

25 EU規則(816/2006)との整合性を取る必要から、当該法律が20061117日に施行の法律により廃

止されたとの連絡が入った(2007年2月26日)。

(17)

96

規則から第

102

規則が設けられた。

インド法等の概要については、

本章の

4.6

で触れ

た。

特許法のみ改正を行った国

・シンガポール:改正特許法(

2004

7

1

日施行)では、特に

PartXII

「特許発明の政

府使用」

(第

56

条から第

62

条)が外国政府への輸出規定や特許発明の政府使用を定義

しており、

この規定により

2003

8

30

日の一般理事会決定に対応していると判断さ

れている。即ち、当該規定は外国政府の緊急事態に対処して、政府間協定に基づき、シ

ンガポール政府(あるいは政府が認定した団体)が強制実施権を行使するものである。

・韓国:

2005

5

31

日の特許法改正により

WTO

合意に基づいて医薬品の輸出に関連

する規定が導入された。即ち、特許法第

107

1

項に、

「国家緊急事態その他の緊急事

態の場合及び医薬関連の特許製品の輸出相手国における公衆衛生問題を解決する目的

の場合」が追加された。また、この際は生産された医薬品全量が輸入国に輸出されるこ

とを規定している。ただし、特許法第

107

条は通常実施権設定の裁定に関する条文であ

り、これは取りも直さず、韓国では強制実施権ではなく、裁定による通常実施権の設定

として取り扱うことを意味する。また、輸出相手国は

WTO

加盟国である必要はなく、

当該医薬品の製造能力がないか、不足していることを韓国政府に通知することにより輸

出が可能となる。ただし、輸出相手国で当該医薬品に特許が付与されている場合には強

制実施権が付与されている、あるいは付与する意思があることが要件となっている。

④法改正を行っていない国

既に、

現行法は

2003

8

30

日の一般理事会決定に対応が可能

(欧州連合加盟国に付

いては、加えて

EU

規則

(816/2006)

への対応)であるとして、法改正の意思を示していな

い諸国もある。医薬品を輸出する可能性が考えられる先進国の中ではオーストラリアを挙

げることができる。

オーストラリアの現行特許法は

2006

年法令第

106

号による改正の特許法

27

1990

年法

83

号)

であるが、

この中で第

12

章が

「強制実施権及び特許の無効」

また特許規則

1995

12

20

日改正、

1996

1

1

日施行)の第

12

章「強制実施権及び特許の無効」がそ

れぞれ強制実施権に関連した条文である。ただし、これらは一般的な強制実施権に関する

規定であり、公衆衛生に関する特許医薬品の製造や輸出に関する規定は、一切含まれてい

ない。

本件に関して、現地弁理士事務所

28

を通じて特許庁から以下の回答を得た。

オーストラリアは、他の諸国と同様にTRIPS 協定を公衆福祉の目的で改正することに賛成であり、医薬 品の輸出に関する条件、医薬品の識別表示、その他の条文の改正案に賛成している。ただし、オーストラ リア国内では公衆福祉に関する議論は事実上起こっていない。

現在審議されている特許法改正案(Intellectual Prpoperty Laws Amendment Bill 2006)はオーストラ リアから重要な医薬品の輸出を許可することに関する改正ではない。現行、オーストラリア特許法の強制 実施権はあくまで国内に限定されている。

修正TRIPS 協定を批准するためには特許法を改正する必要があると考えているが、現時点で国内に特許

27 http://scaleplus.law.gov.au/html/pasteact/1/545/top.htm

参照

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